高知県出張調査研修報告書

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第1         視察(調査)項目

加古川市には、聖徳太子ゆかりの鶴林寺、ヤマトタケルノミコトが産湯に使用したとされる石のたらいを始めとする多くの歴史資源が点在している。しかし、個々の歴史資源の魅力が十分に周知されているとはいいがたいこと、各歴史資源間の関連性や、歴史資源と地域の自然・食との結びつきが弱いといった問題がある。

そこで、各歴史資源を磨き上げるとともに、各歴史資源と地域の自然・食を結びつけることにより、観光クラスター化による周遊コースを形成し、より多くの観光客に、より長時間加古川市に滞在いただき、外貨が落ちる仕組みをつくる必要がある。

そこで、かかる仕組みづくりで先行している、高知県の観光施策を視察させていただいた。

 

第2 復命事項(所見及び感想)

1 高知県観光施策の概要について

高知県では平成18年以降、「土佐二十四万石博」、「花・人・土佐であい博」、「土佐・龍馬であい博」、「志国高知龍馬ふるさと博」、「楽しまんと!はた博」、「高知家まるごと東部博」、「奥四万十博」、「志国高知幕末維新博」と立て続けに観光博を開催してきた。この継続的な努力により、平成18年度には県外観光見込み客が322万人であったが、大河ドラマ「龍馬伝」が放映された平成22年度には435万人を記録した。その後も高水準を維持し、平成29年度には過去最高の440万人となり、観光総消費額が1126億円となった。人口約70万人、県税収入約650億円の高知県にとって大きな成果を上げているといえる。

 

2 各取り組みについて

⑴     「土佐二十四万石博」

平成18年に開催されたこのイベントは、高知市中心部のみ盛り上がり、県東部・西部への波及効果がなかったとの課題が残った。

⑵     「花・人・土佐であい博」

平成20年に開催されたこのイベントは、メイン会場がなかったことからPRや誘導に課題が残った。

⑶     「土佐・龍馬であい博」

このイベントは平成22年1月から、平成23年1月にかけて、大河ドラマ龍馬伝の放送に合わせて開催された。上記⑴と⑵の課題を踏まえ、高知市のメイン会場のほか、県内3か所にサテライト会場を設置した。この4会場では、公式ガイドブックの発行、スタンプラリーの実施などで県内各地への旅巡りを提案した。これは現在につながる観光クラスター化の萌芽と評価できる。これにより観光客が広く県内各地を周遊する仕組みをつくる試みが始まった。さらに高知市内のメイン会場には、高知観光情報発信館を併設した。ここは県内の観光情報を集結し、情報発信の拠点となった。これは各観光資源の魅力度を磨き上げる試みといえる。

⑷     「志国高知龍馬ふるさと博」

このイベントは、龍馬ブームを継続させ、大河ドラマ反動減を抑制するため、上記⑶の「土佐・龍馬であい博」からわずか48日後の、平成23年3月から平成24年3月まで開催された。このイベントでは、①志の偉人伝、②花絵巻、③食祭り、④自然・文化まるごと体験という4つのテーマを柱に高知県の魅力を磨き上げ、情報発信した。さらに「土佐・龍馬であい博」の4会場から15会場に増やし、スタンプラリーを実施し、県内を広く周遊する仕組みを拡張・充実させた。

⑸     「リョーマの休日」

上記⑶⑷といった2年連続の博覧会後、観光客の反動減を防ぎ、県内の周遊を促進するため平成24年4月からこのキャンペーンが始まった。高知県内の460を超える観光施設でお得な特典が受けられるようにしたり、龍馬パスポートがスタンプ数の増加に応じてステージアップする仕組み等をつくり、観光クラスター化をさらに強化拡大した。

⑹     「志国高知幕末維新博」

これは明治維新150年を記念して、平成29年3月から平成31年1月まで開催された。観光クラスター化をさらに推進し、県内全域にバランスよく25会場を配置した。これにより周遊客が延泊し、この25会場だけで入場者数は約333万人を記録した。高知県の人口が約70万人であること、高知県が太平洋側という、神戸、大阪からのアクセスが不便な場所にあることを考慮すると特筆すべき成果といえる。

⑺     「リョーマの休日 自然&体験キャンペーン」

上記⑹の「志国高知幕末維新博」終了日の翌日である平成31年2月1日からこのキャンペーンが始まった。これは、これまで取り組んできた歴史や食を生かした観光を引き続き推進しながら、高知県の強みである自然を前面に出した自然・体験型観光キャンペーンである。この目的は新たな観光資源を創出するとともに、中山間地域の振興や活性化を目的としている。定番スポットを磨き上げるとともに、新規観光資源を創出し、新たな経済効果を生み出すことが期待される。

 

3 最後に

⑴     ユニークな発想をする職員を大切に育てること

ステージアップする観光パスポートや、「リョーマの休日」など遊び心あるネーミングなど、数々の魅力的な企画は広告代理店などに丸投げすることなく、県職員自ら考え実行しているとのことだった。ユニークな発想をする職員を大切に育てる文化が素晴らしいと感じた。

⑵     棚卸、磨き上げ、クラスター化について

まずは、①加古川市の自然、史跡、ゆかりの人物、食など魅力的な観光資源を棚卸し、磨き上げる必要がある。次に、②それらをユニークな発想で関連付けクラスター化することにより、観光客が周遊し、長く滞在していただける仕組みをつくりたい。そしてトライ&エラーを繰り返しながらその仕組みをブラッシュアップしたい。

⑶     加古川市の観光ポテンシャルについて

確かに高知県が一貫してフィーチャーする坂本龍馬は強烈な魅力をもつ人物である。しかし、加古川市は聖徳太子や、ヤマトタケルノミコトなど坂本龍馬に負けるとも劣らない魅力的な人物たちゆかりの地である。また西国街道は古来より多くの歴史上の人物が行き来してきた。

観光資源というと、雄大な自然や、立派な神社仏閣やお金をかけた歴史博物館をイメージしがちである。しかし、「坂本龍馬脱藩の郷 梼原脱藩の道ウォーク」のように、これまで埋もれていた地元の伝承をヒントに体験型観光を磨き上げることも可能である。これは「ものから、ものがたり」へという成熟社会日本の体験型消費のニーズを掘り起こした好例といえよう。加古川市も地域資源を掘り起こし、棚卸し、磨き上げ、クラスター化することにより、多くの観光客を呼び寄せる潜在能力を有していると考える。

以上

高松市出張調査研修報告書

51388196_1681556771991008_2109130401795538944_n以下は先日の高松市視察報告です。長文ですが、「7 最後に」だけでもお読みいただけると幸いです。

 

第1 視察(調査)項目
多くの地方都市と同様に、加古川市においても歴史のある商店街が衰退している。各商店街は様々なイベントを企画実行するも抜本的な再興ができずにいる。そこで思い切った改革により活力を取り戻した高松市丸亀商店街を視察させていただいた。

第2 復命事項(所見及び感想)
以下は質問事項と、それに対する高松市ご担当者や高松市丸亀町商店街振興組合ご担当者のご回答および、私の感想である。

1 開発にいたる経緯について
天正15年(1587年)豊臣秀吉に封ぜられた生駒親正が高松城を築城した。その際丸亀から多くの商人が城下町に移り住み丸亀商店街が形成された。このように、高松市丸亀商店街は400年以上の歴史がある。1970年代前半、丸亀商店街を含む高松中央商店街は一日17万8000人以上の通行量を誇り、たいへんな賑わいをみせていた。
しかし平成6年の高松サティの出店を発端に、巨大ショッピングセンターの出店が始まった。また明石大橋の完成により、大阪や神戸との商業力の競争に巻き込まれるようになった。そのため、高松市内の商店街では通行量が落ち込み、廃業が相次ぎ、空き店舗が目立つようになった。さらに近年ではアマゾン・楽天などのインターネット上の流通革命が起こり、まったく新しい時代が始まっている。そこで街の有志が集まり再開発計画を検討し始めた。

2 再開発の具体的内容について
この有志達は、商店街再興のために様々なイベントを企画実行した。しかし、衰退の根本的原因を解決しなければ、商店街の空洞化は止まらないという結論に達した。旧来の商店街は各店舗主が独立して所有権と利用権を有していた。したがって顧客ニーズの変化に対応できない店舗が残るとともに、改革の足並みを揃えることができず、思い切った再開発をすることが難しかった。そこで彼らは、再開発ビルを建築するとともに、管理運営方式を一新する計画を立てた。この計画の柱は「所有権と利用権の分離」にある。

3 再開発事業スキームについて
この問題を解決するために所有権と利用権を分離し、利用権を所有者が共同出資するまちづくり会社に委ねた。これにより、まちづくり会社が商店街全体の利益を最大化するために実効性のある管理運営を行えるようになった。たとえ所有者であっても、売上目標を達成することができなければ廃業を薦められる。そして、廃業した所有者は配当を受け取ることができるようになる。つまりこの所有者も配当利益の最大化に関心を有する。したがって各店舗が新陳代謝を繰り返し、能力と意欲が高い者たちだけが商業を営むことになり、顧客ニーズの変化に対応した魅力度の高い店舗が並ぶことになる。

4 再開発のコンセプトについて
郊外の大型店舗を商業力で戦っても、商店街に勝ち目がない。したがって、丸亀町を安心、安全で美しくて、便利で、住みやすくて、居心地の良い街に作り変えることにより街の居住者を増やし、街の商業を回復させるとを目指した。

5 再開発の効果について
この再開発により、通行量が底を打ち回復に転じた。また、不動産価値も持ち直し、商店街A地区の固定資産税納税額は開発前の400万円から3600万円と9倍に増加した。ちなみに、すべての再開発が終了すると年間10億円の納税が見込まれる。仮に再開発の原資を自治体が補助金として交付したとしても、増収分を市民の教育・保育・福祉などの向上に充てることができる。

6 今後の課題について
地方都市に、再びオフィス需要が高まる可能性は極めて低い。他方、郊外での生活に困難を感じる高齢者が増加している。したがって高齢者用居住アパートを建築し、中心市街地への移住を促すことを目指している。これにより裕福な高齢者が集まり、市街地の商店街で新しい商売を生み出すことが課題となる。

7 最後に
「街づくりは、腹の座った理事長と、クレージーな3名がいればできる」という高松市丸亀町商店街振興組合ご担当者のお言葉が強く心に残った。この言葉の通り、最終的な意思決定権をあまりに多くの人々に委ねると、平均的で凡庸な改革しかできない。
この方は、丸亀商店街で呉服屋、履物屋、うどん屋など幅広く商売をする商家の跡取りであった。彼は、多くの人々が地方都市の衰退について真剣に自分事としてとらえることができなかった時代から強烈な危機感を抱いておられた。そして、連日朝から商店街を再興するべく奔走し続けた。
彼は、本業をおろそかにしていることを理由に母親から解雇を言い渡されるほど、街づくりにのめりこんだ。
一国一城の主である各商店主を説得してまわり、各商店の利用権を街づくり会社に託すこと、およびたとえ伝統のある商店の所有者であっても営業目標に達しない場合には退場いただき、新陳代謝を図るという条件を了承させた手腕に心から尊敬の念を感じる。
地元住民の高い志、より良い地域社会を創りたいという公の心、実行力、数々の困難に直面しても諦めない意思の強さが社会を変える。行政は民間投資を誘導するために思い切った規制緩和をするなどして、全力で志高い市民を応援する必要がある。そうしなければ彼らは既得権益を守ろうとする勢力につぶされてしまう。猛烈な時代の変化の前に思考停止になり立ちすくんでいては変化の波に飲み込まれて地方都市の活力は失われてしまう。我々議員も含めて、市民一人ひとりが、それぞれの持ち場で腹をくくり、自分たちが見たい変化に自分たち自身がならなければいけないと痛感した。
以上