明石市出張調査研修報告書

別紙

明石市出張調査研修報告書

第1 視察(調査)項目
加古川市においては、2020年夏に市立小学校・中学校にエアコンを設置することが決まりました。しかし、幼稚園、保育園に関してはまだ未確定な状況です。確かに遊戯室にはすでにエアコンが設置されています。しかし保育室には設置されていません。幼稚園児・保育園児は小中学生に比べて身体が未発達であり、体温調整機能が劣り、より外温の影響を受けやすいため、エアコン設置の必要性は高いです。
また、近隣の播磨町では2018年冬までに、稲美町では2019年9月までに保育室にもエアコンを設置する予定です。これら近隣市の動向からも加古川市は具体的な設置計画を立てる必要があると考えます。
この問題意識から、エアコン設置について先行している明石市の状況を視察いたしました。

第2 復命事項(所見及び感想)
以下は私の事前質問書及び現場における質問事項と、それに対する明石市ご担当者様の御回答です。

1 エアコンの設置時期について
⑴ 小中学校
平成28年から平成30年度
※まず遮音性が要求される音楽室から順次設置した。
※コンピューター室はすべて設置済。
※図書室における設置はこれからの課題。
※教室の位置・状況に応じて、ビルマルチ方式とパッケージ方式を使い分けている。
※南北棟と東西棟でエアコン設置の緊急性が異なることにも配慮した。
⑵ 公立幼稚園・保育園
平成30年度から平成31年度
※預かり、三歳児保育を始めた。

2 設置台数
⑴ 中学校
普通教室242教室、音楽室13教室の計255教室
小学校
普通教室576教室
⑵ 公立幼稚園・保育園
・市内27園すべてにおいて、大保育室、および保育室2室(預かり保育、3歳児保育)について設置を進めている。
・一般の保育室については1室につき1台の空調機を設置。
・大保育室については、該当室の面積、天井の形状等に応じて2台から4台の空調機を設置。

3 設置費用について
⑴ 小中学校
平成28年度:455,384千円(255教室)
平成29年度:631,405千円(358教室)
平成30年度:471,555千円(218教室)
⑵ 公立幼稚園・保育園
平成30年度 予算額:60,780千円
※備品購入費のうち、空調機本体のみ。
※預かり、三歳児保育を始めため、これまで物置等として使用していた教室の床、カーテン、備品整備費が別途必要になる予定。

4 設置方式について
⑴ 小中学校
国の補助金の活用を大前提としていたため、直接施工方式。
※PFI(Private Finance Initiative)も検討したが、大型PFIの経験がなく、コンサルの力を借りる必要が生じたため却下した。
⑵ 公立幼稚園・保育園
備品購入費で設置。

5 設置後のメンテナンス費用について
⑴ 小中学校
・1年間のメーカー保証のあと、機器保守契約を結んでいる。
・中学校は、平成30年度において年額2,268千円で契約。
⑵ 公立幼稚園・保育園
・設置後、不具合があった場合は、その都度、修繕費で対応予定のため未定。

6 ランニングコストについて
⑴ 小中学校
・動力については、原則ガス方式を採用。
・電気代はスイッチ類のみのため、把握が困難。
・ガス使用料金については、平成29年度実績(H29.4~H30.3)で中学校が8,425千円。小学校について年間を通しての実績はまだない。
・ガス使用料金について大阪ガスと小型空調契約を行っており、空調専用のメーターを設置し、使用料に基づく料金体系でガス使用料金を支払っている。この契約では、通常の使用料金より割安になっている。
※3.11の震災後、電気供給の不安定さを考慮して計画変更があった。
※魚住小学校はガス管が届かないのでLPガス方式にするなど地理的状況に応じて創意工夫している。
※音楽室のように離れた教室は単独電気方式。
※耐震化、バリアフリー、エレベータ設置、トイレの洋式化などとの関係で、限られた予算を費用対効果の観点からやりくりしている。
※イニシャルコストではガスと電気で違いはない。しかし、ランニングコストについて、電気の不安定性に鑑み、原則ガス方式とした。
⑵ 公立幼稚園・保育園
・電気代については、空調機のみの個別メーターでないため、園全体の電気代での比較しかできないため、電気代の前年比増が、新たに設置した空調のためかどうかは一概に言えない。

7 教室の使用頻度に応じて設置時期や設置の有無にメリハリをつけているか
⑴ 小中学校
・主に普通教室への整備のため、使用頻度に基づいた整備は行っていない。
・普通教室は、設計する年度の5年後までの児童生徒数推計に基づき、最大のクラス数で設置。
※確かに児童数減少傾向の学校もある。しかし、大久保や西明石の北部は開発が行われ、児童が増加傾向にあるため将来予測が重要になる。
※一時的な人口増加に過度に対応することは財政の健全性維持の観点から問題がある。
したがってリース方式のプレハブ校舎建設により将来の少子化に備えている。
・中学校は、ブラスバンド等の音楽活動による近隣への影響を考慮し、まず音楽教室に空調整備を設置した。
⑵ 公立幼稚園・保育園
・平成30年度から3歳児保育及び預かり保育を行う園については、保育室、及び大保育室に各1室の空調機を設置(設置園数:5園)。
・平成30年度から預かり保育を行う園については、大保育室に空調を設置(設置園数:13園)。
・各園から運営状況をヒアリングし、設置する保育室や設置時期等について協議している。

8 設置に至る経緯(賛成派、反対派それぞれの具体的な意見等)
⑴ 小中学校
・市議会各会派からの設置要望
・校長会等、学校職員からの設置要望
・住民からの設置に関する問い合わせ
※要するに関係各者からの反対はなかった。「教育環境を充実することにより、周辺市町村から子育て世代を集めても、市内に大学がないことから高校卒業と同時に市外に転出し、将来の明石市の納税者になってくれない」との意見は、教育委員会には来ていないとのこと。
⑵公立幼稚園・保育園
・「待機児童完全解消プロジェクト」の一環として、市立幼稚園の空間を活用し、3歳児保育や預かり保育事業について、平成31年4月に実現可能な園すべてに拡充するという方針のもと、その拡充に伴う施設整備事業として、各園において3歳児保育や預かり保育を行う保育室等へ空調機を設置することになった。

9 設置に関して、議会、住民、首長等の関係者の理解賛同を得るための経緯・工夫について
⑴ 小中学校
・議会に対しては、まずは子どもたちが主に利用する普通教室への設置を進め、特別教室については、利用状況等を確認しながら検討することで理解を求めた。
・学校に対しては、高校進学の観点から中学校への先行設置、小学校については2年設置計画としているが、児童数の多い小学校に優先して設置することで理解を求めた。
※確かに体力や猛暑に対する耐性の観点からは、中学校は後回しで良いように思える。しかし、中学校を先行させることにより、世代間のエアコン設置による恩恵の平等性を確保できる。
・住民には広報あかしなど広報紙で広く理解を求めた。
⑵ 公立幼稚園・保育園
・明石市は「こどもを核としたまちづくり」を進める上で、待機児童解消を最重要課題として取り組んでいる。議会や市民に対しても、常任委員会や広報あかし等において十分に説明を行い、ご理解をいただく努力をした。

10 最後に
エアコン設置の教育効果について、小中学校では夏休みの短縮ができたが、学力向上との相関関係についてまだ検証していないとのことでした。
他方、現場を視察させていただいた幼稚園においては、「食欲増進、意欲増進の効果があった」、「外遊びやプール遊びのあと、保育室にもどると、肌のべたつきが収まるため幼児が自分で着替えができるとの教育効果があった」とのことです。また、「体温の上昇により保護者に緊急の迎えを要請することも減った」との効果があるとのことです。
また、限られた予算のもと、設置が遅れている他園に対する配慮を示しておられました。具体的には、自分で移動することが容易な5歳児はエアコンが設置された大保育室へ避難できるので、エアコンの設置が遅れている、より年少の園児がいる他園への設置が優先されるのもやむを得ないとのことでした。
このような利他の心や、他者の痛みに対する豊かな想像力が、これからの税収の落ち込む人口減少社会においては必要であると考えました。
またエアコン設置と並行して地球温暖化ガス削減、環境課題などの環境教育を行っておられる点も加古川市でおおいに参考にしたいです。
以上

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