高松市出張調査研修報告書

51388196_1681556771991008_2109130401795538944_n以下は先日の高松市視察報告です。長文ですが、「7 最後に」だけでもお読みいただけると幸いです。

 

第1 視察(調査)項目
多くの地方都市と同様に、加古川市においても歴史のある商店街が衰退している。各商店街は様々なイベントを企画実行するも抜本的な再興ができずにいる。そこで思い切った改革により活力を取り戻した高松市丸亀商店街を視察させていただいた。

第2 復命事項(所見及び感想)
以下は質問事項と、それに対する高松市ご担当者や高松市丸亀町商店街振興組合ご担当者のご回答および、私の感想である。

1 開発にいたる経緯について
天正15年(1587年)豊臣秀吉に封ぜられた生駒親正が高松城を築城した。その際丸亀から多くの商人が城下町に移り住み丸亀商店街が形成された。このように、高松市丸亀商店街は400年以上の歴史がある。1970年代前半、丸亀商店街を含む高松中央商店街は一日17万8000人以上の通行量を誇り、たいへんな賑わいをみせていた。
しかし平成6年の高松サティの出店を発端に、巨大ショッピングセンターの出店が始まった。また明石大橋の完成により、大阪や神戸との商業力の競争に巻き込まれるようになった。そのため、高松市内の商店街では通行量が落ち込み、廃業が相次ぎ、空き店舗が目立つようになった。さらに近年ではアマゾン・楽天などのインターネット上の流通革命が起こり、まったく新しい時代が始まっている。そこで街の有志が集まり再開発計画を検討し始めた。

2 再開発の具体的内容について
この有志達は、商店街再興のために様々なイベントを企画実行した。しかし、衰退の根本的原因を解決しなければ、商店街の空洞化は止まらないという結論に達した。旧来の商店街は各店舗主が独立して所有権と利用権を有していた。したがって顧客ニーズの変化に対応できない店舗が残るとともに、改革の足並みを揃えることができず、思い切った再開発をすることが難しかった。そこで彼らは、再開発ビルを建築するとともに、管理運営方式を一新する計画を立てた。この計画の柱は「所有権と利用権の分離」にある。

3 再開発事業スキームについて
この問題を解決するために所有権と利用権を分離し、利用権を所有者が共同出資するまちづくり会社に委ねた。これにより、まちづくり会社が商店街全体の利益を最大化するために実効性のある管理運営を行えるようになった。たとえ所有者であっても、売上目標を達成することができなければ廃業を薦められる。そして、廃業した所有者は配当を受け取ることができるようになる。つまりこの所有者も配当利益の最大化に関心を有する。したがって各店舗が新陳代謝を繰り返し、能力と意欲が高い者たちだけが商業を営むことになり、顧客ニーズの変化に対応した魅力度の高い店舗が並ぶことになる。

4 再開発のコンセプトについて
郊外の大型店舗を商業力で戦っても、商店街に勝ち目がない。したがって、丸亀町を安心、安全で美しくて、便利で、住みやすくて、居心地の良い街に作り変えることにより街の居住者を増やし、街の商業を回復させるとを目指した。

5 再開発の効果について
この再開発により、通行量が底を打ち回復に転じた。また、不動産価値も持ち直し、商店街A地区の固定資産税納税額は開発前の400万円から3600万円と9倍に増加した。ちなみに、すべての再開発が終了すると年間10億円の納税が見込まれる。仮に再開発の原資を自治体が補助金として交付したとしても、増収分を市民の教育・保育・福祉などの向上に充てることができる。

6 今後の課題について
地方都市に、再びオフィス需要が高まる可能性は極めて低い。他方、郊外での生活に困難を感じる高齢者が増加している。したがって高齢者用居住アパートを建築し、中心市街地への移住を促すことを目指している。これにより裕福な高齢者が集まり、市街地の商店街で新しい商売を生み出すことが課題となる。

7 最後に
「街づくりは、腹の座った理事長と、クレージーな3名がいればできる」という高松市丸亀町商店街振興組合ご担当者のお言葉が強く心に残った。この言葉の通り、最終的な意思決定権をあまりに多くの人々に委ねると、平均的で凡庸な改革しかできない。
この方は、丸亀商店街で呉服屋、履物屋、うどん屋など幅広く商売をする商家の跡取りであった。彼は、多くの人々が地方都市の衰退について真剣に自分事としてとらえることができなかった時代から強烈な危機感を抱いておられた。そして、連日朝から商店街を再興するべく奔走し続けた。
彼は、本業をおろそかにしていることを理由に母親から解雇を言い渡されるほど、街づくりにのめりこんだ。
一国一城の主である各商店主を説得してまわり、各商店の利用権を街づくり会社に託すこと、およびたとえ伝統のある商店の所有者であっても営業目標に達しない場合には退場いただき、新陳代謝を図るという条件を了承させた手腕に心から尊敬の念を感じる。
地元住民の高い志、より良い地域社会を創りたいという公の心、実行力、数々の困難に直面しても諦めない意思の強さが社会を変える。行政は民間投資を誘導するために思い切った規制緩和をするなどして、全力で志高い市民を応援する必要がある。そうしなければ彼らは既得権益を守ろうとする勢力につぶされてしまう。猛烈な時代の変化の前に思考停止になり立ちすくんでいては変化の波に飲み込まれて地方都市の活力は失われてしまう。我々議員も含めて、市民一人ひとりが、それぞれの持ち場で腹をくくり、自分たちが見たい変化に自分たち自身がならなければいけないと痛感した。
以上

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